2017年3月26日日曜日

「逆説のカスタマーサクセス」を参考情報で深掘りしてみよう


2017/3/22のCustomer Success Cafe「逆説のカスタマーサクセス」にご参加いただいたみなさま、お疲れさまでした! 当初は参加者70名を想定して募集をはじめましたが、増枠を重ね130席が満席となり関心の高さがうかがえました(会場をご提供くださったスマートニュースさんから予備イスまでお借りして設営いたしました。ありがとうございました!)。

馬田さんもブログで指摘くださっていましたが、当日会場で挙手によるアンケートを採らせていただいたところ、かなり多くの割合の方がカスタマーサクセスに関わるお仕事をされていることが分かりました。多くの企業が取り組みを始めていることを実感しました。仲間が増えていくのはうれしいですね。

「逆説のカスタマーサクセス」資料を公開いただきました

当日のスライドを、馬田さんのご厚意により公開いただきました。175ページにわたる大作です!




注目は「カスタマー・サクセス・エンジニアリング」

先般のスライド資料「カスタマーサポートのことは嫌いでも、カスタマーサクセスは嫌いにならないでください」同様、今回も「スタートアップのCustomer Success戦略」として、3つの柱を上げていただいています。

先般の「カスタマーサポートのことは嫌いでも、カスタマーサクセスは嫌いにならないでください」資料では
  • 顧客と顧客にとってのSuccessを定義する
  • サービスレベルを下げる
  • サービス文化にあった企業文化を培う
とまとめていただいた3つの柱を、今回の「逆説のカスタマーサクセス」資料では、
  • 顧客を絞る
  • サービスレベルを下げる
  • Customer Success Engineering
とまとめていただいており、「カスタマーサクセスにおけるテクノロジーの活用」をトピックとして深堀りいただいています。

企業でのカスタマーサクセス部門に関する組織設計やKPI設定、各社の求人情報、現役で活躍されているカスタマーサクセスマネージャーの方の経歴などを伺っていても、これまではカスタマーサクセスをマーケティングやセールスに近い位置づけとして扱っているケースが多かったように感じます。

一方、本質的なカスタマーサクセスを目指すには、カスタマーサクセスマネージャーが活躍しなくてもサクセスできるしかけ作りが必要です。そのためには、セールスからプロダクトまですべての組織が一体となってカスタマーサクセスを志向しなければなりませんし、特に契約後の本質的な課題解決のためには、プロダクト領域でのアプローチが大切になってきます。

最近はCustomer Success Enginnerという職種で活動されている方求人を見かけるようになってきていますし、テクノロジーを活用できることもカスタマーサクセスマネージャーにとって大切な役割のひとつになっていくのだろうと思います。

さらに学びたい方のための参考情報

ここからは、馬田さんに発表いただいた「逆説のカスタマーサクセス」の資料をもとに、さらに深く学んでいくための参考資料などを(勝手に)まとめていきます。

カスタマーサクセス10の法則


講演の中でもとりわけ写真撮影が多かったスライドです。こちらは翻訳前のタイトルを含めた簡単なスライドがSlideshareにあがっています。

さらに詳細情報がダウンロードできるページがあります。こちらは英語で45ページにおよぶ資料です。
http://www.gainsight.com/resource/the-10-laws-of-customer-success/ (要連絡先情報入力)

すべての活動がプリセールス


In a recurring revenue business, there's no such thing as post-sales. Every single activity is a pre-sales activity.
これは「Customer Success」の2章で触れられてました。ビジネスがサブスクリプションモデルになれば毎期間、契約するかしないかを判断されることになる。だから今やっている活動は、次の契約のプリセールスにあたるよね、という話です。

講演の中で、ACV (Annual Contract Value: その契約の1年間あたりの価値)によってカスタマーサクセスの体制を変えよう、という話がありましたが、これも本書で触れられています。「High Touch / Low Touch / Tech Touch」の話ですね。
カスタマーサクセスの業務は、意識しておかないとどんどんと個別最適化し複雑になっていきます(契約更新時期になってから、あわててカスタマーごとの個別対応したりしますよね)。「サクセス」ができるようになってきたら、ACVからかけられるコストを逆算し、その制約条件にあった体制や仕組みを考えてみることも必要になってきます。

サービスレベルを落とす

以前、自分で戦略マップを書いてみようとしたときにつまづいてしまい、こちらの本をみつけました。ウォルマートやIKEAの事例も載っていて、ストーリーで理解できます。


トラブルが解決されれば満足度があがる

まさにその通りなのですが、さらにポイントとなるのは「トラブル解決を依頼してこないカスタマーが、トラブルにあっていないとは限らない」ということ。受けた問い合わせだけを一生懸命解決していても、トラブルにあいながら問い合わせをするのを諦めているカスタマーがその何倍もいるかもしれません。これがカスタマーサクセスが「攻めのサポート」をするべき理由のひとつなのだろうと考えています。(別途整理したいと思っています)

このあたりは、グッドマンの法則で知られるジョン・グッドマン氏の書籍が参考になります。なお、書籍タイトルの「CS」は、「カスタマーサクセス」ではなく「カスタマーサービス」です。

グッドマンの法則は第三まであるのですが、うち第一法則を引用しておきます。
グッドマンの第一法則: 「不満を持った顧客のうち、苦情を申し立て、その解決に満足した顧客の当該商品サービスの再入決定率は、不満を持ちながら苦情を申し立てない顧客のそれに比べて高い」
まさに、ですね。

用語の話(1):CAC


馬田さんが書かれたブログに詳しいポストがあります。CACはCustomer Acquisition Costの略ですね。
CACをちゃんと実データを使って計算してみると驚くほど高かったりするので、確認してみることをオススメします。

スタートアップのお金と指標入門講座:ユニットエコノミクス (Unit Economics) — CAC & LTV


用語の話(2):Negative Churn


講演中にも「最初は分かりづらい概念ですが」と前置きされていらっしゃいましたが、経営やセールス部門と契約更新率や解約率の議論をするときやカスタマーサクセスチームの目標設計をするときにも、アカウントベースなのか金額ベースなのかの認識を揃えることが大切だったりしますね。こちらも、馬田さんのこのブログポストがわかりやすいです。

スタートアップのお金と指標入門講座:チャーンレート (Churn Rate)

最後に:「まとまった本や情報」リスト


このあたりの資料ですね。「逆説のカスタマーサクセス」では、とくに書籍「Customer Success」のエッセンスを多くいれていただいたようです。

The 10 Laws of Customer Success
詳細版はこちらからダウンロードできます(要連絡先情報入力)。
http://www.gainsight.com/resource/the-10-laws-of-customer-success/

SaaSスタートアップ創業者向けガイド
セールスフォースさんのサイトの、こちらからダウンロードできます。
https://www.salesforce.com/jp/smallbusinesscenter/resources/SaaS-Startup-Founders-Guide.jsp

そして「逆説のスタートアップ思考」

一時期は大手のネット書店から軒並み在庫切れになってしまっていましたが、流通は安定してきているようです。電子書籍版の予約も始まっているようですね。
少しでもお役に立てれば幸いです。
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